滲出性中耳炎

滲出性中耳炎とは急性炎症を伴わないで、中耳腔に貯留液がある状態です。鼓膜に穿孔がなく、中耳に貯留液があり難聴の原因となりますが、耳の痛みや発熱などの急性炎症のない中耳炎と定義されます。
乳児の約50%では急性中耳炎に罹患した時に、中耳に貯留した細菌性の液体がそのまま残ることで起こります。
1歳までに50%以上、2歳までに60%以上の乳幼児が滲出性中耳炎に罹患することが知られています。
高齢者では耳管の機能が低下するために、鼻汁が耳管咽頭口より入ることで起こります。
当院では滲出性中耳炎の診療は保険診療となります。

滲出性中耳炎の症状

1.聴力の低下(10~40dBの伝音難聴)
2.耳閉感
3.耳の中で液体が動く感じがある

滲出性中耳炎の年齢分布

乳幼児と高齢者に多いです。

滲出性中耳炎の治療

1.内服治療を行います。鼻症状の改善とともに消失することがあります。
2.当院ではOtoLAM™を使用して鼓膜切開術を行います。
3.滲出性中耳炎は再発することが多いです。再発する場合は鼓膜チューブ挿入術を行います。

滲出性中耳炎(症例1)

症例1:黄色の液体(矢印)が鼓室に貯留しているのがわかります

滲出性中耳炎(症例2)

症例2:滲出性中耳炎:鼓室全体が黄色になっているのがわかります。
症例2:標準純音聴力検査:左耳の伝音難聴です。
ティンパノメトリー:右:A型→正常 左:B型→滲出性中耳炎を疑います。

滲出性中耳炎(症例3)

症例3、左図:OtoLAM™による鼓膜切開直後。黄色の貯留液が貯まっている部分の中央にOtoLAM™で切開しました。
症例3、右図:開窓した部分から吸引したことで黄色の液体がなくなっています。聴力も改善しました。
 

鼓膜チューブ挿入術

OtoLAM™による鼓膜切開術は治療効果が非常に大きいですが、滲出性中耳炎は再発を繰り返すことがあります。その場合は鼓膜チューブ術を行います。
鼓膜チューブ挿入術の合併症として耳漏が続くことがありますが、滲出性中耳炎に対する治療効果はOtoLAM™よりも大きいです。

 

滲出性中耳炎(症例4)

症例4:鼓膜チューブが挿入されています(矢印)。

耳の病気一覧

  • 難聴の分類と正常な鼓膜

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  • 急性中耳炎

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    滲出性中耳炎とは急性炎症を伴わないで、中耳腔に貯留液がある状態です。

  • 老人性難聴

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  • 突発性難聴

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  • 耳垢栓塞

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